1939年富山県生まれ。日本大学医学部、同大学院医学研究科博士課程修了後、マイアミ大学医学部脳神経外科、同大学救命救急センターに留学。
1993年、日本大学医学部附属板橋病院救命救急センター部長・教授に就任。
救命患者の命を救う画期的な治療法を開発し、脳のしくみを解明。北京五輪金メダリストの北島康介選手、競泳日本代表選手チーム、ロンドン五輪女子サッカー日本代表チームをはじめとするスポーツ界、「文武両脳の子どもを育てる育脳メソッド」として、子育てや教育界など、数多くの成果をあげている。
脳の育ちの時期にとくに大切なのは、脳細胞が増え続けていく0~3才までの間と、増え続けた細胞が減少する3~7才の間。(「細胞の間引き減少期」ともいいます)なぜ減らすのかというと、脳の発達のために不要な細胞はどんどん間引き、必要な細胞だけを選りわけるしくみがあるからです。
細胞をよりわけていく一方で、子どもの脳の中では情報の伝達回路が作られ、細胞同士がつながり合っていきます。このとき脳細胞は、「気持ちのこもった情報」に対して強く反応します。ですから、0~7才の時期は、早期教育よりも気持ちのこもった対話なコミュニケーション、遊びが大切。
脳のしくみに沿った子育てをすることで、「理解・判断を間違えない脳」「勉強ができる脳」など、就学以降に実力を発揮する脳の素質を育むことにつながっていくのです。
脳の細胞数が増えていくこの時期は、子どもの脳の成長の第一段階。考えをまとめたり、人に気持ちや心を伝える脳のしくみを鍛えるために、とても重要な時期です。
3才までは引き続き脳細胞が増え続けます。「気持ちが伝わる脳」を育むと同時に、正誤・類似性の判断を司る「間違えない脳」を育む親子コミュニケーションが必要です。
3才までに爆発的に増え続けた脳細胞は、最大数に達した後、7才ころを目安に緩やかに減少します。この時期は脳に悪い習慣を親子で止め、空間認知能力を鍛える遊びを取り入れましょう。
会話の内容がまだ理解できない赤ちゃんでも、幼い脳はママの表情や声のトーンから、しっかり情報を受け取っています。手遊びなどをするときはとくに、目と目を合わせながら、気持ちを込めて語りかけて。乳幼児の視野はまだ狭く、最初に見たものに目が向く習性があるため、気持ちを伝えたい時ほど目を見て伝えることが大切です。
ママに気持ちを込める習慣がなければ、子どもにも「気持ちを込めて全力投球する」という、育脳において大切な習慣が身につきません。絵本の読み聞かせひとつとっても、「まだ理解できないのでは?」と思わず、気持ちを込めて、繰り返し読んであげてください。赤ちゃんの脳内では、大きな反応や変化が起こっているのです。
体に触れながら、目を合わせながら行うベビーマッサージやリトミックは、この時期の親子遊びにはもってこい。「言語習得が遅れるから、赤ちゃん言葉は使わない方がいい」という意見もありますが、「赤ちゃん言葉を使うとママが気持ちを込めて会話できる」というのであれば、脳科学では何の問題もありません。
理解・判断力を司る「統一・一貫性」の本能は、同じ行動を繰り返すことによって鍛えられていきます。もし子どもが同じ遊びばかり繰り返していても、ママは「いつまでやってるの!」と叱ったり、ジャマをしたりしないように。子どもは無意識にも脳の本能に従って、みずからの統一・一貫性を磨いているのです。
「できるだけたくさんの絵本を読ませたい」という親心はよくわかるのですが、育脳の観点では、量より質。子どもは、気に入った絵本ばかりを繰り返し読みたがりますが、これは脳がもつ「統一・一貫性」という本能によるもの。物事を正しく判断する能力の基盤になるので、ママは面倒がらず、繰り返し読んであげてください。
「統一・一貫性」の本能は、筋の通らないこと、間違ったことを嫌うと同時に、「似たような色だけど、こちらの方は好き、こちらは好きではない」など、微妙な違いの判断にも作用しています。普通の人が気づかないような違いを見抜く鋭い直感力を育むには、間違い探し遊びがおすすめ。ママやきょうだいと競争するのもいいですね。
文武両道の才能を伸ばすには、空間で物事の位置関係や距離などを認識する「空間認知能」を鍛える必要があります。遊びを通じて鍛えるには、積み木やブロック遊びが◎。丸や三角ではなく、どの方向から見ても形が一貫している立方体や直方体を使いましょう。オセロや将棋など正方形のマス目を使う遊びも、同様におすすめです。
空間認知能力を鍛えるには、空想のお絵描きではなく、実際のものや光景を見ながらの写生のほうが効果があります。対象物との距離や正確な形、色合いなどをとらえることで、目から入ってくる情報に対して機能する「視覚空間認知能」を高めることにつながるので、親子で一緒にさまざまな写生を楽しんでみましょう。
運動能力を左右する空間認知能力は、水平目線と正しい姿勢を保つことで鍛えられます。目をつぶってその場でジャンプしてください。空間認知能力が弱いと、着地点がずれ、同じ場所に着地できません。床にテープなどで×印をつけ、目をつぶったままジャンプ。どちらが同じ位置に着地できるか、親子で競争すると盛り上がります。